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アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とはかゆみを伴う湿疹が繰り返し起こる疾患で、軽快、増悪を繰り返し慢性的に経過することの多い疾患です。多くは乳児期に発症し、学童期までに軽快することが多いですが、成人以降も持続することがあります。

アトピー性皮膚炎の原因と
悪化の要因

皮膚のバリア機能の低下

皮膚が乾燥しやすく、外的刺激に弱い

アレルギー体質

家族にもアレルギー体質の方がいることが多い、ハウスダストやダニ、乳幼児期は卵などの食物アレルギーを伴うことも多い

環境要因

汗、乾燥、ホコリ、ペット、衣類など

ストレスや疲労などの生活習慣

 

これらの要因が組み合わさって悪化すると考えられています。

アトピー性皮膚炎の症状

乳幼児期:生後2ヶ月~4歳

顔に湿疹ができ、頭や首、胸に広がります。鳥肌のようなブツブツが生じたり、頭部に分厚いかさぶたができたりといった症状を起こすこともあります。乳幼児は乳児湿疹や脂漏性皮膚炎などの様々な皮膚炎を起こしやすい時期ですのでアトピー性皮膚炎と診断されることは少なく、一般的な湿疹の治療を行った上で経過を観察します。

小児期:~12歳

顔・頭・首・胸に加え、他の部分にも湿疹ができるようになります。皮膚が乾燥し、赤みのある腫れ、小さく赤い湿疹などを生じ、掻くとミミズ腫れが残ります。頻繁に圧迫や擦れを生じる肘や膝の裏側、お尻などの皮膚がゴワゴワに肥厚する、顔の皮膚が白っぽくなる、ウロコのようなフケが出るといった症状を起こすこともあります。成長に連れ重症度が下がり自然寛解する場合もありますが、寛解後に再発するケースもあります。また、乳幼児期には発症がなく、小児期に初めて発症することもあります。

思春期・成人期:12歳以降

炎症を起こしやすいのは、首や手首、胸、肘や膝の内側で、無意識に掻き壊して悪化させやすい傾向があります。炎症を繰り返すことで皮膚が肥厚してゴワゴワになる・色素沈着するといった症状を起こし、強いかゆみで日常生活にも影響を及ぼす可能性があります。

アトピー性皮膚炎の治療

正しく、継続的なスキンケア(主に保湿)と、症状に応じた薬の使用が基本です。

保湿剤

皮膚が乾燥するとバリア機能は大きく低下しますが、皮膚の湿度を適度に保つことでバリア機能は回復します。現在では、ヘパリン類似物質のように高い保湿力を持った成分を配合したクリーム・ローション・軟膏などがありますので、部位や状態などに合う保湿剤を使って肌の乾燥を防ぎましょう。なお、保湿は症状の改善だけでなく、再発防止にも役立ちます。

外用薬

外用薬かゆみや炎症をできるだけ早く鎮めるために使用します。必要最小限で最大の効果を得られるよう処方していますので、医師の指示を守って使用することが重要です。

ステロイド外用剤:症状の程度、部位によって適切な強さを選択

免疫の過剰反応を抑制することで、炎症、かゆみ、赤みなどを改善させます。短期間で炎症を鎮める効果が期待でき、アトピー性皮膚炎では一般的に使用されています。強力・弱力など強さの異なる複数の種類があり、部位や症状に合わせた処方が可能です。
なお、再発を繰り返すアトピー性皮膚炎では、症状が落ち着いた後、定期的に少量のステロイド外用薬を使用するプロアクティブ療法が有効とされています。
なお、ステロイドは効果が高い反面、長期使用によって皮膚が薄くなる・感染症発症のリスクが高くなるなどの副作用が現れる可能性が指摘されています。使用する際は、量や使用頻度など医師の指示を守り、定期的に受診して経過を観察しましょう。

ステロイドではない外用剤:炎症が落ち着いてきた時、部位に使用し再燃を防ぐ

タクロリムス軟膏をはじめとする免疫抑制外用薬は、ステロイドを使用できない場合などに使用されます。ステロイドとは異なる作用機序で免疫反応を抑える薬であり、副作用リスクが比較的低いとされています。

外用薬の使用方法と注意点

外用薬を塗る前に皮膚を清潔にし、塗った後は浸透するまでしばらく放置するよう心がけましょう。症状のある部位に適切な量と頻度で塗ることで効果を得られ、副作用リスクを下げられますので、医師の指示をしっかり守って使用し、過剰な使用や不適切な使用はしないでください。また、治療によって皮膚の状態が変われば必要な治療内容も変わります。定期的に受診して経過を観察した上で処方を受け、指示通りに使用することが重要です。また、皮膚のバリア機能を正常に保つためには保湿が不可欠です。外用薬と保湿剤を併用することで皮膚のバリア機能を向上させ、治療効果も高まります。
アトピー性皮膚炎は、症状の悪化と改善を繰り返す慢性疾患ですので、再発を防ぐためには患者様の状態や体質、ライフスタイルなどに合わせた長期的な治療やケアが欠かせません。状態により必要となる治療やケアは変わってきますので、定期的に受診して皮膚の良好な状態を長く維持しましょう。

抗アレルギー薬の内服:かゆみを抑える補助的な役割

抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬

アトピー性皮膚炎はかゆみを伴いますが、掻いてしまうと皮膚に細かい傷ができ、皮膚のバリア機能が失われ、状態が悪化します。かゆみを抑える治療として、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の内服が有効です。

ステロイド内服薬

重症化してステロイド外用薬では十分な改善が得られない場合に使用します。免疫反応の抑制効果が高く、より短期間の症状改善が期待できます。医師の指示を守って服用してください。

免疫抑制薬

16歳以上を対象に使用可能な薬です。強い炎症がある場合に検討されます。高血圧や腎機能低下などの副作用を起こす可能性がありますので長期間の使用はできません。また、内服期間中は血圧を計測して記録し、定期的に血液検査を行って状態を確認する必要があります。

生物学的製剤

上記の基本的な治療を行っても症状のコントロールがつかない場合に選択します。

スキンケア

刺激をできるだけ減らし、皮膚を清潔に保って、保湿することを心がけましょう。
汗をかいたらこまめに拭く、汗を吸った衣類を早めに着替えるなど、汗による刺激に肌を長時間さらさないよう注意します。
シャワーや入浴では、高温のお湯を避け、ぬるめにしましょう。できるだけ香料や化学物質などを含まない低刺激の石鹸をよく泡立て、泡を手のひらにとって優しく全身を洗い、丁寧に洗い流します。入浴後は乾いたタオルでそっと水気を吸い取り、擦らないよう注意します。また、水気が取れたらすぐに外用薬を塗布し、保湿することが重要です。

原因の除去

肌への刺激を避けることは、悪化・再発の防止に不可欠です。アレルゲンを除去するためのこまめな掃除、下着やタオルといった素肌に触れるものは低刺激の綿などを選ぶ、香料や化学物質の少ない洗剤・化粧品・スキンケア・ヘアケア用品を使うなどが有効です。ただし、自然素材でもウールのように刺激が強いものもありますので注意が必要です。

上手な薬の塗り方

外用薬を処方する際は、使用の際の適量もお伝えしています。こうした指示を守り適量を患部に優しく塗りましょう。外用薬の後に保湿剤を塗ることで高い治療効果が期待できます。
なお、薬の吸収率は患部の部位によって変わります。皮膚が柔らかくなって吸収率が上がるのは入浴直後ですので、最も吸収率の低い手のひらと足裏に塗る場合は特に入浴直後をお勧めしています。入浴前に外用薬や保湿剤を準備しておき、入浴後すぐに外用薬と保湿剤を塗布できるようにしておきましょう。
なお、適量や塗り方、リスクなど、薬について気になることがあればどんな内容でも遠慮せず、医師にご質問ください。